頭痛についての知識と、薬剤使用過多による頭痛「薬物乱用頭痛」について
看護師さんや看護学生さんの中には頭痛で困っている方が多くいらっしゃるのではないでしょうか。
100人中8人は片頭痛持ちであるとの調査もあり、事務員や販売員、システムエンジニア、看護師の方は片頭痛の有病率が他の職種に比べて多い傾向にあります。
そこで今回は、頭痛についての基礎知識と、薬剤使用過多による頭痛「薬物乱用頭痛」についてお話しいたします。
頭痛の分類
頭痛には大きく分けて、片頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛といった「一次性頭痛」と、くも膜下出血や脳腫瘍、高血圧による「二次性頭痛」があります
一次性頭痛
片頭痛
中等度から重度の頭部痛の反復性発作を伴います。
通常は拍動性で、しばしば片側性であり、悪心、嘔吐、光、音、匂いへの過敏症を伴います。
体動で増悪するので、休息、静かにすることで治ります。
緊張型頭痛
軽度から中等度の頭部痛の反復性発作を伴います。
通常は非拍動性で、しばしば両側であり、悪心、嘔吐、光、音、匂いへの過敏症を伴いません。
体動で増悪せず、マッサージ、お風呂、飲酒、体操など改善します。
群発頭痛
群発頭痛は男性に多く、平均1年ごとにある期間に限って起こり、一度起こるとしばらくの間(1~2ヶ月)毎日続きます。痛みは非常に強く、片眼の奥をえぐられるような痛みを伴います。
頭痛が毎日起こる時期(群発期)以外には頭痛は起こりません。
薬物乱用頭痛
不適切な痛み止めの飲み過ぎで痛みのセンサーがおかしくなり、飲んでも飲んでも痛くなる状態。
月に10日以上痛み止めを飲んでいる場合は注意が必要です。
二次性頭痛
二次性頭痛
くも膜下出血や脳腫瘍、髄膜炎、高血圧等、原因があり頭痛を呈しているもの。
命に関わるため見逃せない頭痛です。
頭痛の治療について
頭痛はちゃんと治療をすれば、ある程度治せる疾患です。
頭痛の治療の3本柱
- 痛いときには急性期治療薬(痛くなったら痛み止めを飲む)
- 痛くならないように「月に2回以上片頭痛がある、または月に3日以上頭痛で生活に支障がある」なら毎日飲む予防薬。
もしくは1から3ヶ月に1回のCGRP関連製剤の注射による予防治療。 - 頭痛ダイアリーで記録をして生活習慣を見直す
(増悪行動の回避、原因がわかれば医学的、社会的対応が可能。予防薬の治療効果の判定、頭痛の日数や重症度が減ったなど)
※参考:頭痛オンライン 頭痛ダイアリー(https://zutsu-online.jp/diary/)
月に2回以上片頭痛があったり、月に3回以上生活に支障がある頭痛で困っていたら頭痛外来へ行き、予防治療を受けましょう。
また、月に10回以上痛み止めを飲んでいる場合は薬物乱用頭痛の可能性があるので、一度頭痛外来で診察を受けましょう。
頭痛治療の現実
片頭痛持ちの方のうち実際に病院を受診する方は3割程度で、大多数の方が病院に行くほどではないと思っているのが現状です。
また、二次性頭痛と違い緊急性が低いため、医師でも軽く見てしまう疾患でもあります。
市販の鎮痛剤で対処が出来るため、予防薬を処方・服用せずに鎮痛剤を使用し続けた場合、薬剤使用過多による頭痛「薬物乱用頭痛」を発症してしまいます。
医療者も患者も社会も、頭痛は自己判断せず病院に行き、ちゃんと治療すれば治るという認識が必要です。
薬物乱用頭痛について
「薬物乱用頭痛」は、正式には「薬剤使用過多による頭痛」といいます。
上記でもお話したように、不適切な痛み止めの飲み過ぎで痛みのセンサーがおかしくなり、飲んでも飲んでも頭痛がする状態のことを言います。
2021年に、新潟県糸魚川市で国内初の薬物乱用頭痛の有病率調査が実施されました。糸魚川市で行われた有病率調査では、15-64歳の一般市民の2.32% (43人に1人)が薬物乱用頭痛になっていることが分かりました。
【出典】
- 糸魚川総合病院 脳神経外科 勝木将人医師(https://www.itoigawa-hp.jp/hospital/departments/departments06.html)
- Neurol Sci 2022年オンライン「Questionnaire-based survey on the prevalence of medication-overuse headache in Japanese one city—Itoigawa study」(https://link.springer.com/article/10.1007/s10072-021-05831-w)
- 時事メディカル「薬物乱用頭痛、有病率の国内初報告」(https://medical.jiji.com/news/50867)
- にいがた経済新聞(https://www.niikei.jp/338053/)
薬物乱用頭痛の治療法
- 痛み止めの中止(断薬)+予防薬の開始
- 断薬後1~2週間激しい頭痛の後に治る
- ひどい場合は入院して治療を行う
最後に
WHO(世界保健機関)は健康な生活に支障がでる疾病として、1位 脳卒中、2位 頭痛、3位 認知症と挙げています。頭痛によって仕事や学業のパフォーマンスが低下、場合によってはお休みすることもあります。頭痛による経済損失は重大であり社会問題です。
頭痛はちゃんと治療をすれば、ある程度治せる疾患です。
薬物乱用頭痛を避けるためにも、月に何度も鎮痛剤を服用するような場合は一度病院へ行き、正しい治療を受けましょう。
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